カミナリグモの新作が再び聴ける日が来るとは。
オリジナルアルバムとしては「MY DROWSY COCKPIT」以来7年半ぶり。
CDのリリースとしても2015年の「続きのブランクペーパー」以来。
2016年に活動休止し、2018年に活動再開してから初のアルバムとあって非常に楽しみにしていたわけだが、これはその期待を遥かに超える内容になっていることを先に言っておく。
その期待の片鱗は「アニーバーサリー」の配信リリース時からあった。
これはデビュー10周年ライブのために書き下ろされた楽曲。
もちろんその特別な日について綴っているわけだが、お祝いの華やかさの中に鼓動のようなもの、またここから始めるという決意の鼓動が奥にあるように感じた。
ソロの活動を経て得たもの。
そして、カミナリグモとしてこれまで得てきたもの。
コンセプトを持つというより、純粋にその得たもので良い曲を作ろう。
そんな想いを詰め込んで出来たのが今回のアルバムという気がする。
いつも通りとも言えるおもちゃ箱のような愛おしさ。
繊細で物語性のある歌詞に、電子音やバンドの音を重ねて描く唯一無二の世界の数々。
アコギとピアノのシンプルな音色がカーテンコールを告げる「follow me」、マーチのリズムでTHEおもちゃ箱という感じの「ジュエリーソング」が楽しさを連れて、「一秒先」が更に前へ前へと手招いてくる。
「TOY BOX STORY」で少しの切なさを見えれば、「rat-foot」が色んなものをピョンと跳ね飛ばしていく。
「Half Asleep」のゲームような音に不思議な夢を見せたかと思えば、「手品の続き」では現実の苦悩と葛藤にバンドサウンドを響かせて強く後押ししてくれる。
全英語詩の「mutant」の異質な存在感に、「アニバーサリー」の華やかさと決意。
「patchwork」の短い物語に、良い所全部詰め込んだような軽快な「キャンディーブルー」、都会感の中から畳みかけるような音に核心を聴かせる「夜明けのスケルトン」と来て、最後にこの煌びやかな内容に落ち着きを与えてくれる「SCRAPPY SONG」で静かに終わる。
もうこれはベストアルバムと言っても良いくらいの充実の内容。
間違いなくカミナリグモの最高傑作であり、今の音楽シーンに一石を投じることが出来る名盤だ。
ちなみに、こちらでアルバムのトレーラーが視聴できます。