2017年07月13日

キセキ その17 〜ザ・ベイビースターズ〜

アーティスト特集企画「キセキ〜僕を作った音楽達〜」。
(企画内容とタイトルの意味はこちら

第17弾となる今回は、"ザ・ベイビースターズ"を紹介したいと思います。


昔からこのブログを読んでいる方にとってはようやくという感じでしょうか。
前身のHP時代から度々レビューを書いているにも関わらず、まさかアーティスト特集では17弾にしてやっと登場という…。

というわけで、お待たせしました。
遅れてしまいましたが、ザ・ベイビースターズを紹介しましょう。

ザ・ベイビースターズは田中明仁さん、高橋りきやさん、市川洋介さん、浅見トマルさんの4人組バンド。
途中脱退があって人数変動していますが、その辺りは後ほど。

楽曲に関しては非常にポップでキャッチー。
この人たちほどのメロディセンスを持っているバンドが他にいるだろうか?というくらい一度聞いたら確実に聴き手の耳に残す曲を多く届けてくれた。

彼らの楽曲との出会いはデビュー曲の「ヒカリへ」…かと思いきや、実はそれよりも前。

きっかけとなったのは「ジョビジョバのLips Party 21.jp」というラジオ番組。

全く関係が無さそうに見えるだろうが、番組内のコーナーでC-CAX(シカックス)という謎のバンドの「SE・KA・RA・SHI・KA」という曲が流れてきて、すごい耳に残る曲だなと思っていた。

何を隠そう、このC-CAXこそがザ・ベイビースターズである。
メジャーデビュー前からセンスは圧倒的で、番組内でも非常に好評だったのが印象に残ってる。

とはいえ当時はC-CAXがザ・ベイビースターズであることは知らなかったわけですが。

なので結局のところ出会いとなったのは、やはりデビュー曲の「ヒカリへ」。

この曲が衝撃的だった。

イントロの一音。
それを聴いただけで視界が一気に開けるようなキラキラ感。

そこからサビへの真っ直ぐに突き抜けていく展開に詰まった凄まじいエネルギー。

一瞬でも聴けば色んなことがどうでも良くなってしまいそうなほど元気を与えてくれる楽曲だ。

アニメ『ONE PIECE』のオープニングテーマとなっていたこともあり、耳にしたことがある人も多いのではないだろうか。

ただそれほどの楽曲でありながらオリコンでは最高42位。
少し物足りない感じはあるが、その代わり27週に渡ってランクインとロングヒット。

この曲のヒットにより、次のシングルがCDTVの来月発売の注目作で挙がるなどザ・ベイビースターズに注目度は一気に上がった。

そのタイミングでリリースされたのが「なんで」だ。

「ヒカリへ」とは打って変わって優しく儚いバラードナンバー。

イントロのピアノの音色からもう切なさ全開なのだが、その切ない気持ちを隠すように徐々にポップさを増す音色や、サビで聴かせる届かない想いを搾り出すように歌う声など、一曲の中に聴き所が多数ある。

またこの曲の特徴的なのは最後。

歌詞カードに記載のある内容の途中からフェードアウトが始まり、最後の"なんで"のフレーズは音色と共に儚く消えていくので、言葉以上に切なさを感じさせるのが印象的だ。

楽曲の質、注目度ともに文句なしの状態だったのだが、オリコンでは最高96位…。

名曲が評価されないことにはいつも納得いかないが、この曲の場合は特に納得がいかなかった。
そしてここで知名度を上げ切れなかったのがもったいなかった。

何故なら、続く「オレンジ」がまた名曲だったからだ。

ここまで2曲は田中さんの作曲だったが、今回シングルとしては初の高橋りきやさん作曲。
軽快で爽やかなミディアムテンポのポップナンバーで、心地良さだけを残す名曲。

ザ・ベイビースターズならこの曲が好きという人も少なくない。

CMソングとしても大量にO.A.されていたものの、セールス的にはあまり振るわず…。

ここから1ヶ月後にシングル「ヤング☆ヤング☆ヤング」をリリースするもこの流れは止まらず。
「オレンジ」に引き続きTOP100圏外。

ベビスタ流ヤングマン(YMCA)とも言うべきディスコソングで、底抜けに明るく元気が出る一曲だったのだが、あまり広まらなかったのは惜しい。

ちょっと後ろ向きな流れになってしまいましたが、「ヤング☆ヤング☆ヤング」発売と同時にファーストアルバム「ベビスタ」を満を持してリリース。

このアルバムが本当に素晴らしい。
J-POP史に残る一枚と言っていい。

どんなに良いアルバムでも1、2曲はそうでも無いと思うものがあるのだが、このアルバムについては皆無。

「スパイラル」の突き抜けるような明るさ、「恋愛力」の小気味良いリズム、「LITTLE STAR」の跳ねるようなキーボードの音色に乗るメロディ。
「love」や「永遠に咲く花〜evergreen〜」のような繊細な音色で聴かせるバラード。

どれがシングルになってもおかしくないほどのセンスとクオリティを有していた。

そしてこのアルバムの特徴的なのは、全員が作詞・作曲をしていることだ。

それは一歩間違えるとバラバラとなってしまいそうだが、彼らの場合はそれぞれの個性がより際立っているのが面白い。

「恋愛力」の小気味良いリズムというのはドラムの浅見トマルさんが作曲しているからこそだし、「LITTLE STAR」の音色もキーボードの市川洋介さんが作ったからこそ活きる仕上がりなのだと思う。

田中さんの曲に注目しがちだが、ザ・ベイビースターズというバンドは全員が同等の楽曲センスを持っていた。
それを知ったら、これからが益々楽しみにならざるを得ないではないか。

そのアルバムから半年。
また一つ代表曲ともいえる一曲をリリースすることになる。

その名は「去りゆく君へ」。

タイトルが示す通りの悲しいバラードナンバー。

歌いだしの声からどこか坦々と今の状況を見つめている情景が浮かび、そこから徐々に君との思い出と面影が鮮明に映し出されていく。

でも楽しかった思い出を振り返れば振り返るほどに、君のいない今の状況が悲しく、どうしようも無い想いが溢れてくる。

♪この想いは何だ

行き場を失った感情を曝け出すように歌うここからの流れは、何度聴いても胸が締め付けられそうになる。

そして最後。
もう一度歌いだしのと同じ言葉を繰り返すのだが、坦々とした感じのあった最初と違い、今という状況を噛み締め切れない感情が滲み出ていて、より深い想いを余韻として残す。

6分弱と確かに長めの曲ではあるのだが、その時間以上に濃厚で深い想いの交錯した名曲。
今までのポップでキャッチーなイメージを180°ひっくり返すほどの楽曲だ。

この曲も残念ながら大きなヒットには恵まれていないのだが、ベビスタの歴史を語る上では絶対に外せない一曲。

ジャケットが白黒の鳥の写真だったのは謎でしたが…。


ここからしばらくリリースが空く。

HP上では2004年夏に一旦「SUNDAY」のリリースが発表されたのだが、後に延期が発表される。

これを見たときは不穏な感じがしたのだが、実は「SUNDAY」にタイアップがついたとのことで、放送に合わせてリリースするという形を取ったもの。

代わりに「夏のちから」が急遽シングルでリリースされることになった。

この曲あまり目立たないのだけど、実はかなりの名曲。

作曲が高橋りきやさんということで「オレンジ」と同じく前面に心地良さが出た楽曲。

特にテンポ良く進むリズムが非常に心地良く、PVではそのテンポに合わせて写真をコマ送りのように流す映像が印象的で忘れられない。

また、夏のキラキラとした情景と夏の終わりの寂しさが絡み合う歌詞も秀逸で、心地良さだけでなく美しさも兼ね備えている。
シングルでは初めての市川さん作詞なのだが、やはり良いセンスをしている。

そしてこの3ヶ月後、満を持して「SUNDAY」をリリース。

この曲を初めて聴いたときは本当に衝撃的だった。
こんなに甘くほっこりするような楽曲があったのかと。

爽やかで甘いメロディ。
どこか陽だまりのような優しさと温かさが溢れてくる音色。

これだけでも十分素晴らしいのに、この曲については歌詞を聴いてみて欲しい。

恋人との何気ない日常を描いているのだが、「私のどこが好き?」という良くありそうな会話に上手く返せずにやきもちしつつも、こうやって一緒にいることが楽しいということに気づかせてくれる。

言葉自体に飾りもないし平凡なもののはずなのに、こういうの良いよなと思わせてくれるのが田中さんの歌詞の見せ方の妙。

繰り返すけど、こんなに甘くほっこりする楽曲にはそうそう出会うことはできない。
というより、同じテーマに絞ればこれを超える楽曲には出会えていない。

そのくらいの名曲だった。

ちなみに、上で書いたタイアップというのはアニメ『焼きたて!!ジャぱん』のこと。

当時どこかのインタビューで『焼きたて!!ジャぱん』の連載誌がサンデーだったことを挙げ、縁を感じると言っていたことが懐かしい。
その言葉通り、この縁は非常に大きく、久々にヒットと呼べる売り上げとなった。

とはいえ、オリコンでは最高位53位。
それでも、今も「この曲良いよね」と言ってくれる人が多くいるのが嬉しい。

そして、ここから1ヶ月後。
待望のセカンドアルバム「laugh→love」をリリース。

前作「ベビスタ」がポップスの金字塔とも言うべき決定的な一枚だったのに対し、今作は耳に残るメロディはそのままに、より普遍的で生活観のある音空間を聞かせているのが印象的。

シングルでもある「SUNDAY」に始まり、出会いや別れを水に準えたシンプルで壮大な「aria」、いつも飲んでいた紅茶を見つけ、もう君と過ごした日々に戻れないと知る「アールグレイ」の最初3曲の流れは特に秀逸で、一気に聴き手の心をつかむ。

短いながらも強烈なインパクトを残す「吠える」や「二万円」と曲を挟みつつ、アルバムタイトルでもある笑顔を体言した「笑顔の法則」や「360°カメラ」といったシングルにしても良かったのではないかと思うほど良質なメロディが次々と顔をのぞかせる。

後半の「サイコロキャラメル」や「風色」、「去りゆく君へ」のバラードは単純なメロディの良さだけでなく、その奥に秘めた感情までを繊細に映してくれる。

ラストの「閃光」は歌いだしこそ少し怪しげな雰囲気を醸し出していたが、徐々にらしさと感情を前面に押し出した歌声を織り交ぜながら前へ進む光を感じさせることで、アルバムに強烈な余韻を残すのも面白い。

正直ここまで違うタイプのアルバムになるとは想像していなかったが、その想像の斜め上を行く一枚になっていて、ベビスタの可能性の計り知れなさに驚いたのを覚えている。

だが、その期待とは裏腹にここからリリース間隔が空いてしまう。

1年3ヶ月ぶりの沈黙を破ってリリースされたのが「World」。

シングルとしては「ヒカリへ」以来の疾走感溢れるナンバー。

真っ直ぐで前向きな歌詞が印象的で、疾走感とともに前へ前へと押し進めてくれるよう。

当時中日の高橋光信選手が登場曲で使っていて、ナゴヤドームで試合を見ながら一人でテンション上がっていたのが良い思い出です。

カップリングの「プロローグ」もかなりの名曲で、ここについては以前レビューを書いているので是非そちらを。
http://karosu.seesaa.net/article/446369912.html

ただ今作は少しだけ違和感があった。
間違いなく良い曲だなと思いつつ、音の作り方、特にキーボードの音が少ないように感じた。

実はその通りで、この曲を最後にキーボードの市川さんとドラムの浅見さんが脱退することになる。

そのときの市川さんのコメントで「もうキーボードはいらないのかなと感じた」という旨を書いていたのが印象に残っている。

ここまでのベビスタの華やかな音色には市川さんのキーボードも、浅見さんのドラムも不可欠だっただけに、この2人が抜けることはショックであり、不安であった。

ここからは大きな情報もなかったが、「World」から実に1年8ヶ月。
久々の3rdアルバム「LIFE」をリリース。

このリード曲「うつ病なんです」を聴いたとき、脱退の背景を知っている人なら驚いたのではないだろうか。
イントロからキーボード全開じゃないか!と。

脱退を経て、元の位置に戻ってきたのは驚きであり、非常に嬉しかった。

で、このリード曲「うつ病なんです」。

タイトルだけ見たらどれだけやばい曲なのかと思われそうだが、これぞベビスタというポップでキャッチーさ全開の応援歌。

"頑張れ"ではなく"頑張らなくていいですか?"と一歩引いた言葉を綴っていることで、より聴き手に寄り添う形の楽曲になっている。

仕事や生活の辛さや悩み。
それらを多く抱えた現代人に是非聴いてもらいたい。

アルバム全体を見てみると、「うつ病なんです」のような底抜けに明るい楽曲は少なく、むしろバラード曲が多いことがわかる。

バラードが続くアルバムというのは正直退屈さを感じるものも多い。
ただそれは、あくまで一般的な話だ。

このアルバムに限って言えば、それは杞憂と言っていい。

ベビスタらしいラブバラード「終わらないラブソング」、ピアノの音色が耳に残る繊細な「夢とポケット」、歌謡曲テイストの音とメロディに一瞬時が経つのを忘れてくれるような「afternoon cafe」。
イントロの印象的な音のフレーズから一気に惹きこみ、サビで優しさと君を想う気持ちが溢れ出す「愛されたい」、速すぎず心地よいリズムで歩いている世界の視界を開く「spend my life」、盛大なコーラスが花を添える「SUN」。

これだけゆったりした曲が多いのに退屈さを感じさせないのは、それぞれのドラマがとても色鮮やかだからだ。

それは言葉の選び方によるところも大きいが、シンプルさの中に魅せる音と唯一無二の耳に馴染むメロディの存在がとにかく大きい。
これだけメロディで勝負できるバンドが、ベビスタ以外にどれほどいるだろうか。

改めてベビスタのすごさを感じることできるだろう。

そして最後を飾るのは「また会う日まで」。
肩肘張らずに等身大の想いを優しく歌い上げるのが印象的な楽曲で、またこんな素敵な音楽に出会えることを心待ちにさせてくれた。

ところが現時点ではこのアルバムが最後のリリース作品となっている。

デビュー10周年記念で4人一夜限りの再結集のライブを行ったり、しばらくはライブの活動がメインであったものの、ここ数年はそれも無い。

田中さんは作家として楽曲提供の活動をしており、田中さんの名前を見つけるとなんだか嬉しくなる。

とはいえ、やはりザ・ベイビースターズとしての楽曲もまた聴いてみたい。

そんな日が来ることを願いつつ、今は彼らが残した珠玉の名曲達に酔いしれていたいと思う。
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