2016年03月03日

キセキ その14 〜サザーランド〜

アーティスト特集企画「キセキ〜僕を作った音楽達〜」。
(企画内容とタイトルの意味はこちら

第14弾となる今回は、"サザーランド"を紹介したいと思います。

サザーランドは阿部祐也さん、鈴木紘太さん、松田朋樹さん、佐藤貴志さんによる4人組バンド。
聴いた瞬間から耳に残る歌声とメロディがとにかく素晴らしかった。

彼らと言えば真っ先に浮かぶのがこの曲。

"君には届かないだろう あれから三度目の夏が〜"

このフレーズに聞き覚えがないだろうか?
当時プロミスのCMソングとして大量にO.Aされていたあの曲だ。

その名は「Silent movie」。

たった15秒のCMだけで頭から離れなくなるほど印象的なメロディと歌声。
それが与えたインパクトはとてつもなく大きかった。

歌詞を読むと恋人との別れの歌にも見えるが、これは亡くなった友人を思って作られたもの。
それを知って歌詞を読み直してみると、痛切な想いが伝わってくる。

もちろんそれは音楽となって響き渡ると、より深く感じられる。
だからこそ一瞬で多くの人に届いた。

実際オリコンでもTOP30に迫る売り上げを記録。
ここからサザーランドの快進撃が始まることを何となく感じていた。

続いてリリースしたのが「その先に霞んでいる/悲しみのうた」。

「その先に霞んでいる」は何と引き続きプロミスのCMソングに。
新人バンドが2作続けて同じCMに使われるのは珍しく、やはりこの曲も印象に残っている。

メロディの良さは変わらないが、この曲にはどことなく気合を感じた。

5分40秒という楽曲の長さの中に、詰め込まれた歌詞。
未来へ進もうとしながらも前へ進めずにいる苦悩と、そこから最後には踏み出そうとする勇気。

その熱い言葉が胸に染みる。

そう思っていたら最後の最後に曲の構成が変わり、大合唱の"lalala〜"の言葉と優しいなサウンドが迎えてくれる。
アウトロが素晴らしい曲は多数あるが、最後にこんな風に盛り上がる曲は聴いたことがない。

それだけにこの曲は「Silent movie」に負けずとも劣らないほど印象が強い。
CMではここが流れなかったことが惜しい限りだ。

「悲しみのうた」はまたタイプの違う曲。
「その先に霞んでいる」が希望だとしたら、「悲しみのうた」は絶望。

君がいないことに対してどうすることもできない感情。
痛み悲しむことしかできないことを示す歌声とサウンドの重厚感は、ただ哀しみを運んでくる。

A面の表にするには重い楽曲だが、それでもシングルに持ってこれるのは彼らの自信でもあり魅力でもあるだろう。

リリース毎に驚かされる彼らの楽曲だが、続く「君となら/その瞳のかげり」で更に驚かされることになる。

アニメ『陰陽大戦記』のOPになっていた「君となら」は、力強い疾走感溢れるロックナンバー。
今までの聴かせるタイプの曲とは違い、とにかくその格好良さと前へ前へと引っ張っていく展開がたまらない。

特に最後に叫ぶように歌う"どんな運命が僕の行く手をはばんでも"の熱さは最高だ。

そしてこのとき感じたのはやはりメロディの良さ。
アップテンポでも耳に残る楽曲というのはメロディが良くなければできないことで、彼らのメロディセンスが本物であると確信した。

両A面のもう一曲「その瞳のかげり」は「君となら」と真逆のタイプの曲で、柔らかな空気が漂う温かい楽曲。

繊細なサウンドと優しい心情描写が心地よく響き渡る。
これまでは歌声とメロディに耳が行きがちだったが、このアレンジを聴いてメンバー全員の技術の高さを感じた。

彼らの良さをより深く感じてきたところでリリースされたのがアルバム「SCREEN〜スクリーン〜」。

上記のシングルが全て収録されているということもあるが、アルバム曲も含めて名曲ばかりが収められている。

まず驚くのが「Dream of reunion」。
アルバムが「Silent movie」、「君となら」という強力なラインナップで始まるのだが、そこに続くこの曲はシングル曲ではないかというほどの仕上がり。

メロディと歌声という彼らの良さを活かすために、バックで支える音の姿。
飾りすぎず、でも控えめすぎず聴かせる歌に、思わず聴き入ってしまう。

「悲しみのうた」に続く「涙雨」はもう少し繊細な曲だが、こちらも聴き入ってしまうという点では同じ。

アルバム前半でこれだけの楽曲を並べたら後半どうするのだろうと思ったら、「GATE」、「スカイ線の向こう」、「MONSTER」とロック色の強い楽曲が次々と迎え撃つ。

こういう格好良い路線も良いなと思っている中で「その瞳のかげり」や「その先に霞んでいる」という温かい曲を聴かせつつ、最後にはアコギで聴かせる「Believe」のシンプルな音色が心を打つ。

まさにこの時の彼らの集大成。
素晴らしいアルバムだったと思う。

オリコンでは44位。
リリース毎に売り上げが落ちていた中でここまで来たことは嬉しいことだが、これだけの作品がここまでしか来なかったことは残念でならなかった。
良い作品が評価されないのは何とももどかしい。

ただその影響は少なからずあったのか、ここまでコンスタントにリリースしてきたが、ここからリリース間隔一気に開く。
当時HPをチェックしては、新作の情報が出るのをひたすら心待ちにしていたのを今も覚えている。

約1年の沈黙を破ってリリースされたのが「and yet/Dreams of youth」。

爽快なロックナンバーである「and yet」は、彼らの健在っぷりに喜ばせてくれたのと同時に、一つの変化に気づかされる。
音だ。

それもそのはず。
今作から佐橋佳幸さんがプロデュースをしていて、今までより巧みな音使いで聴かせる音楽へと進化している。

今までの無邪気な感じとは違う、確かに地面を踏みしめて前へ進もうとする力。
それがこの曲にはあった。

「Dreams of youth」は今までのらしさと新しいらしさが融合する名曲。
耳から離れないメロディはそのままに、それぞれの楽器の音が引き立つ構成がすごく良い。

この2曲を聴いて、サザーランドの2章が始まることを感じずにはいられなかった。

続く「letter」は歌いだしから驚かされる。

ピアノの音色と「さよなら」と歌う切ない声。
そこから徐々にバンドとストリングスの音が重なり壮大な想いが響き渡っていく。

ずっと聴いていたい。
そう思わせるような音が作れるようになったのは、一つの進化だろう。

そしてこの流れでアルバム「SATELLITE〜サテライト〜」をリリース。

シングルから続くこの三部作では"つながる"ジャケットを実施していたのが、それが遂に完成。

もちろん繋がるのはジャケットだけではない。
シングルで魅せた音の変化はこのアルバムでも楽しむことが出来る。

例えば「長月の夜」。
イントロの力強さとサビで見せるもどかしさ。

歪むようなギターの音色も歌詞の心情に合っていて、聴くほどに惹き込まれてしまう。

「名も知らぬまま」のギターも印象が強い。
メロディだけでも十分な存在感があるのに、こういうキメが入ると耳から離れなくなる。

ジャズテイストの「波風」も非常に面白い。
作詞作曲がギターの鈴木さんということもあって、いつもと違う新鮮な印象を聴き手に与えてくれる。

らしさも健在で、「スピカ」や「さよならだけでは」のような繊細なバラード、「泣いたって」の柔らかな音色と歌声の切なさもやはり良い味を出していた。

だが、とにかく売り上げがついてこなかった…。
オリコン182位という結果を知ったとき、雲行きが怪しいことをどことなく感じていた。

アルバム発売から一ヶ月も経たない2007年8月30日。
HP上で活動休止が発表された。

その後も度々HPを訪れてみたが情報が更新されることはなく、2008年4月30日に解散が発表されることとなる。

メジャーデビューから4年3ヶ月余り。
その期間を考えると、シングル5枚、アルバム2枚は少なかったように見えるが、それだけ凝縮された作品ばかりだったと言える。

天性のメロディセンス、感情が滲み出るような歌声、そしてその歌声を引き立てつつ存在感を放つサウンド。
そこから生まれる音楽は間違いなく人の心に届くものだったと思う。

それでも解散という決断をしなければならなかったのが惜しい。
もっともっと彼らの歌を聴いてみたかった。

ただ、残した名曲は今も色あせていない。
もし興味を持っていただけたなら、少しだけ耳を傾けてみて欲しい。

それだけで良さがわかるはずだから。


ちなみに、ボーカルの阿部さんは現在シンガーソングライターとして活動中。
やはりこのままでは終われない…という気持ちが強くあったそうだ。

人に届く歌は今も健在。
HP上から視聴もできるので、これを機に聴いてみるのもオススメです。
http://abeyuya.com/index.html
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