2015年10月22日

キセキ その13 〜エスカーゴ〜

アーティスト特集企画「キセキ〜僕を作った音楽達〜」。
(企画内容とタイトルの意味はこちら

第13弾となる今回は、"エスカーゴ"を紹介したいと思います。

エスカーゴは山本智幸さんと野田智洋さんによるフォークデュオ。

フォークデュオと呼ばれる人たちは多数いたが、その中でも独特の存在感を放っていたのが彼ら。
楽曲はもちろんだが、歌声の魅力が大きかった。

山本さんの野生的で情熱的な低音に、野田さんの柔らかく包み込むような高音の歌声。
このハーモニーがとにかく絶妙だった。

それが良く出たのがデビュー曲「六月のあなた」だろう。

デビュー曲にしては正直地味な楽曲だが、感情を紡ぐようなメロディとアコギの音色に上述のハーモニー。
聴くほどに良さが滲み出てくる感情の渦に飲み込まれ、心揺さぶられる名曲。

こういった聴かせる楽曲をデビュー曲にしてくるあたり、ある種の自身があるんだろうと思った。

だが、次の曲「ユメナラバ」で印象に変化が出てきた。

民族調の音楽が耳に残るこの曲。
一瞬聴いただけで耳に残る音作りは「六月のあなた」にはなかったものだ。

もちろんそれだけではなく、純粋な愛を綴った歌詞だけでも幸せを分けてもらえそうなのに、より磨きのかかったハーモニーがその幸福感を更に増幅して届けてくれる。
まさかこんな風に楽曲を進化させてくるとは思わなかったので、正直驚いた。

そしてその流れの中リリースされたのが、彼らの代表曲ともいえる「東京」。

軽快なアコギの音色に、上京という物語と夢を描いた歌詞の素朴さに心打たれる名曲。
「ユメナラバ」で魅せた音の印象からまた一転し、アコギの音色が前面に出たシンプルさがこの上京の心情と重なり、切なさと温かさを届けてくれる。

やはり彼らにはこういった楽曲のほうが合っている。
それを強く感じた。
(もちろん「ユメナラバ」が悪いという意味ではない)

この曲はアニメ『旋風の用心棒』の主題歌になっていたこともあり、多くの人の耳に届くこととなり、オリコン最高位100位にランクインを果たした。

そして待ちに待ったアルバム「」をリリース。

ただ、この収録内容を見て驚いた人も多いだろう。
「ユメナラバ」が入っていないのだ。

この時のインタビューで、「ユメナラバ」の方向は違うと感じ、よりシンプルな楽曲で勝負したと言っていた(もし違っていれば申し訳ない)こともあり、アコギのシンプルな音色と歌声が真っ直ぐに響いてくる楽曲が多く収録されている。

アルバム一曲目の「帰ル」がまさにそれを体言した楽曲で、そのシンプルさの中に路上で歌っているようなの臨場感と緊張感が漂っていて、ここから始まるアルバムに惹き込まれるように聴き進めてしまう。

「鳩」の柔らかなメロディ、「アンテナ」の耳に残る無骨なメロディに映すグータラな日常感、心揺さぶられる「六月のあなた」に、真夜中のような怪しげな雰囲気を醸し出す「女」。

野田さんが歌う「ヤマモト」での相手へ文句を言いつつ愛を感じる歌に、独り言のように歌う「男」の妙な説得力、エスカーゴだからこそ活きる「ヤブレター」の白黒映画のような渋みのある哀愁感。

息をつかせない「スピード」の緊迫感が漂う疾走感を聴かせたかと思えば、「ゲーム」の朗らかなメロディと歌声に癒され、「東京」に心打たれ、「ジョンへ」のシンプルに歌う言葉に泣きそうになる。

全12曲。
わずか40分ほどの時間だが、その内容の濃さに驚くほど満足感が得られる。

また、シンプルが故に楽曲とハーモニーの素晴らしさが際立っている点も大きな魅力。
これを名盤と呼ばないわけにはいかない。

そんな名盤から3ヶ月で次の曲をリリースするわけだが、これもまた彼らの代表曲と言っていいだろう。
その名は「空想ゲーム」。

イントロからエレキとベースの太い音とアコギの音で始まる格好良さにまず驚き惹かれ、意味深な空想のゲームの話に強いメッセージを乗せた言葉で更に惹きこんで行く名曲。

アルバム「鳩」のシンプルな楽曲の良さを引き継ぎながらここまで格好良さと深みを持った楽曲を出してくるとは。
エスカーゴの潜在能力の高さには何度も驚かされてしまう。

ちなみに、「空想ゲーム」というタイトルは"クソゲー"に聞こえるような言葉にしているらしい。
確かに歌詞に出てくるゲームの内容はまさにクソゲー。

でも奥に真っ直ぐな気持ちが見えるところに愛を感じる。
この辺り、山本さんの言葉選びのセンスの素晴らしさを感じるところである。

この印象の強さもあり、エスカーゴの名前を出すとこの曲を挙げる人も多い。

ただそれとは裏腹に売り上げ的にはあまり伸びなかったのが悔しい。
この曲はヒットして欲しかった。

ここから4ヶ月後には地元福岡ダイエーホークスのオフィシャルサポートソングである「可能性〜ホークスオフィシャルサポートソング〜」をリリース。

イントロから静かに胸が高まるような熱い楽曲。
サビの「♪ウォーオ」の自然と手を空に掲げてしまうようなメロディと歌声が最高だ。

こういうテンポが速くないが熱量を感じる楽曲というのはなかなか歌い上げるのが難しいのだが、それを可能にするのが山本さんの歌声であり、野田さんのコーラスなのである。
可能性はホークスのことでもあり、彼ら自身のことでもあるのだろう。

その無限の可能性を感じていたのだが、これが最後のリリースとなってしまう。

この年、2002年にエスカーゴは解散。
結構突然の解散だったと記憶している。

その間にシングル5枚、アルバム1枚と残した作品は多くはないが、忘れられない楽曲ばかりだった。

解散後、山本さんは"MOTSバンド"を結成して活動もしていたのですが、2007年4月25日に30歳の若さで亡くなられたそうです。

いつか再結成してその歌声が聴けないかと思っていたが、それは叶うことはなかった。

でも残した楽曲は今も息づいている。
それをこの記事で知ってもらえれば嬉しい。
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