2014年06月26日

キセキ その9 〜キンモクセイ〜

すっかりお久しぶりとなってしまいました、アーティスト特集企画「キセキ〜僕を作った音楽達〜」。
企画内容とタイトルの意味はこちらをご覧になっていただければわかると思います。(企画紹介が2007年なので文章が若いな…)

実に4年ぶりとなる今回の第9弾は、"キンモクセイ"を紹介したいと思います。

キンモクセイは伊藤俊吾さん、佐々木良さん、後藤秀人さん、張替智広さん、白井雄介さんの5人組バンド。
CDの帯には「ポピュラーミュージックグループ」と昭和な香りがするキャッチフレーズが書かれている点から、彼らが他のバンドとは一線を画す存在であることがわかる。

キンモクセイとの出会いはデビュー曲の「僕の行方」。
当時CMで流れたこの曲を聴いて、「良い曲だけど、カヴァー曲か何かかな?」と思ったほど懐かしいサウンドが印象的。

調べてみたらオリジナルということで、この時代にこんな歌謡曲テイストでしかも演奏技術が高い楽曲が聴けたことに一気に惹きこまれた。

その「僕の行方」はイントロのギターの音色から懐かしさを漂わせ、サビの展開なども含めて哀愁、過ぎ去りし夏を感じさせる名曲。
アウトロの演奏では高い技術も披露しており、このバンドがただならぬ存在であることをこの時点で感じていた。

ただ、この曲はセールス的にはあまり振るわず、なかなか受け入れられないのかなとも感じていた。

ところがだ。
続く「二人のアカボシ」がその不安を全てかき消してくれた。

リリース前からラジオで大量にOAされ、その認知度が高まったところでリリースされた際、CDショップで相次いで売り切れが発生。
当時通っていたCDショップでも早い段階でなくなってしまい、このCDを買うためにあちこち走り回ったのを覚えている。

それほどまでに人々の心を動かした名曲。
大ヒットしたこともあるのであえて説明する必要もないかもしれないが、やはり素晴らしい楽曲だと思う。

「僕の行方」同様に哀愁を含みつつ、感動を覚えさせるメロディは一級品。
特にサビでその感情を頂点に高める構成は素晴らしいの一言だ。

その良さはもちろん、こういう時代にこの楽曲が受け入れられたことが何よりもうれしかった。

その流れからリリースされたのが「七色の風」。
大瀧詠一を彷彿とさせるエバーグリーンで爽快な一曲。

今までの流れからは一線を画す一曲で、キンモクセイの引き出しの多さに俄然興味が沸いた。

続いて「さらば」とアルバム「音楽は素晴らしいものだ」を同時リリース。

「さらば」は「あたしンち」の主題歌として広く知れ渡った名曲。
大胆にホーンセクションを織り込み、軽快で盛り上がるナンバー。

当初タイトルを見たときはまさかこれで解散か?と思ったが、全くの気のせいでした…。

そしてアルバム「音楽は素晴らしいものだ」。
シングル4曲とシングルのカップリングだった「ゆびわ」、「追い風マークU」を収録した全12曲。

シングルでは全て伊藤さんが作詞作曲をしていたが、アルバムでは各メンバーが担当した曲が収録されていることもあり、様々な色を見せてくれる。
その幅の広さ、そして完成度に「音楽は素晴らしいものだ」と感じる1枚。

中でも「密室」は名曲で、圧倒的に暗い空気感が生み出す惹きこみ感が素晴らしい。
また、アルバムという観点で見ても、このような楽曲があることでアルバムがグッと引き締まる。
曲、そしてアルバムの完成度という点でもなくてはならない一曲だ。

「二人のアカボシ」が収録されていることと、その完成度の高さもあってセール的には好調ではあったが、それでもオリコン10位までしか行かなかったことは少し残念。
個人的な希望としてはもっと売れてるべきだったと今でも思ってる。

続いてリリースされたのが「車線変更25時」。
これまたキンモクセイを代表する名曲の1つだ。

インディーズ時代から存在していたこの曲は、暗めの雰囲気を醸し出すディスコナンバー。
イントロの雰囲気からじわじわと幕が開けていき、サビの決意とも叫びとも取れる言葉に胸に残る。

君の思い出を追いかけるのをやめ、それを追い越そうとすることを"車線変更"と表現しているところは、伊藤さんの非凡なセンスを感じるところだ。
また、実際の地名が登場している歌詞で親近感があることもあり、不思議なほど安心感と高揚感があるところも素晴らしい。

ただこれほどの楽曲でありながら、セールスは思ったほど伸びなかった。
タイアップがなかったこともあるが、この曲は売れなかったのは非常にもったいない。

それでも印象には強く残っているようで、キンモクセイと聞くと「二人のアカボシ」と並んでこの曲を挙げる人も少なくない。
この曲が好きな人間としてはそれは非常にうれしい。

あと、PVで伊藤さんが踊っているのが印象的でという人も結構いる。
あのダサ格好いい踊りは自分も好きです。

ここでふと思ったのだが、「二人のアカボシ」から「車線変更25時」まで全て2002年のリリースだということ。
この年の年末には紅白歌合戦にも出場しているし、この年のキンモクセイはとにかく輝いていた。

2003年初めてのリリースとなる「同じ空の下で」では少し雰囲気が変わる。
キンモクセイらしさが出たという意味では「車線変更25時」と同じだが、懐かしさと爽やかを落ち着いたサウンドで聴かせているところが特徴的。

何度でも聴きたくなる春らしい一曲。

そして次の「人とコウモリ/日曜日の夜」ではもっと大きな変化が出てくる。
両A面のどちらとも伊藤さんが作曲していないのだ。

「人とコウモリ」は白井さん作曲のスカのリズムを取り入れたナンバー。
「同じ空の下で」のカップリング曲「ふれあいUSA」でその手腕は披露されていたのでファンからすれば大きく驚きはしないが、そうでない人からすれば大きく印象を変える一曲。、

かなりダークな曲だけど、「密室」や「車線変更25時」とは一線を画す、世界観としてのダークさ。
怪しげな歌詞がメロディと非常にあっていて好感触。

「日曜日の夜」は後藤さん作曲の切ないバラード。
後藤さんというとアルバム「音楽は素晴らしいものだ」にも収録された「少年の頃の思い出」が思いつくが、まさにそれと同じく繊細な一曲。

胸に響くメロディとギターを奏でさせたら、ピカイチだ。
「人とコウモリ」がダークだったので、この切ない繊細さは対比的に聴くとより良さがわかる。

ただこの頃から明らかに売り上げは落ちてきているという事実。
ヒット性の曲ではないと思ったが、オリコン36位だったのには少し落ち込んだ。

この流れからリリースされたアルバム「風の子でいたいね」もその影響を受けてしまった。
アルバムの内容としては前作「音楽は素晴らしいものだ」からより深化させた楽曲が多く、ファンからすると非常に聴き応えがある1枚。

特に「風の子」と「悲しみ草」は伊藤さんの作曲センスが炸裂した名曲。
どちらも圧倒的な疾走感と格好良さを兼ね備えていて、シングルで出しても遜色なかったと思える。

張替さんの楽曲も2曲収録されていて、特に「Lemonade」は魅せてくれた。
軽快なリズムもそうだが、張替さんのボーカリストとしての素質も垣間見えた。

そんな彼らは、次の作品で面白いことをしてくれる。

8枚目のシングルとして東京ジェンヌとのデュエット曲「二人のムラサキ東京」をなんと、カセットテープでリリース!
「二人のアカボシ」でチャルメラのパッケージをモチーフとするなど、こういうことには定評がある彼らとはいえ、これはよくやったなと思った。

ただ、これに関しては時代の流れに逆らいきれなかったためか、次の月にCDでリリースしている。
カセットテープは聴ける環境がない人もいるので、これは仕方なかったかなと。
(自分は今でもこのカセットテープ大事に保管しています)

そして、もう一つ驚いたのが、この東京ジェンヌが松たか子さんであったということ。
当初"謎の覆面歌手"としていて、誰だろうと話題になりましたが、まさか松たか子さんとは思わなかっただけに驚いた。

これだけ話題性だけでなく歌謡曲というものを完成度高く仕上げた楽曲でありながらも、売り上げは低迷。

続く「メロディ」と「むすんでひらいて」と繊細で壮大な名曲をリリースするも、この流れは止められず。
特に「むすんでひらいて」という楽曲のシンプルで静かなメロディで、余計なアレンジをしていないにも関わらず壮大さを表現した名曲があまり認知されなかったのは残念。

ところが、この流れを変えるとんでもない1枚をリリースすることになる。
それがアルバム「NICE BEAT」だ。

初めて伊藤さんだけの楽曲で構成されたアルバムで、統一感はもちろんだが、その繊細さとセンスには度肝を抜かれた。

「ステレオ」という静かなナンバーをアルバムの始まりに置いたところからもこのアルバムに対する自身が感じられるのだが、軽快な曲から遊び心溢れる曲に、ロック調の曲と様々なアプローチで魅せつつ、決してぶれない芯が何より素晴らしい。
もちろんただ芯がぶれないというだけでない。

タイトル曲でもある「ナイスビート」はその名の通りビートが心地よく、メロディと演奏に酔いしれてしまうほどであるし、「スウィート・ララバイ」が生み出す優雅な空気感も聴き逃せない。
アルバムという中に置くことでグッと引き立った「メロディ」の壮大さに、最後に収録された「むすんでひらいて」が残す余韻も文句なし。

これだけの作品はキンモクセイというより、J-POP界を見てもそうは見当たらない。
個人的に今現在21世紀のアルバムとしてはこれが最高の一枚だと思っている。

ちなみに、この初回盤にはNICE BONUS盤として「夢で逢えたら」のカヴァー曲が収録されている。

ダイハツ「ミラジーノ」のCMソングとして使われていたので、聴いたこともある人も多いだろう。
このカヴァーが非常に良く、キンモクセイの曲じゃないのかというほど見事にはまった一曲だ。

やはり伊藤さんの歌声はメロディがきれいなほどその魅力を発揮できると改めて感じた。

この曲はこの後11枚目のシングルとしてもリリースされている。

しかしこう名作が続いてくると次の曲が楽しみな反面、心配にもなってくるが、この頃のキンモクセイは更に輝きを増していた。

続く「SUMMER MUSIC」はシングルでは久々に軽快でキラキラな一曲。
聴いているだけでワクワクさせてくれる感じはキンモクセイの中では随一だ。

この感じはキンモクセイでなければというより、伊藤さんの歌声でなければ絶対に成り立たない。
カラオケで歌ってみるとわかるのだが、この曲非常に難しくて、あのキラキラした感じにはなかなかならない。

それに気づいたとき、より好きになった曲でもある。

カップリングの「僕の夏」も名曲で、最後の最後までどちらをシングルにするか悩んだそう。
キンモクセイの真骨頂ともいえる夏の終わりを感じさせる哀愁たっぷりのメロディとサウンドで、いつまでも聴いていたくなる一曲。

そしてこの次にキンモクセイを代表するもう一つの名曲がリリースされることになる。
その名は「冬の磁石」。

シングルでは「日曜日の夜」以来の後藤さん作曲のナンバー。
男女の関係を磁石のNとSに例えた詩をラテンのテイストを加えた哀愁たっぷりの音色に乗せることで、切なさを何倍にも高めて運んでいく。

それをバラードにはせず疾走感を持った展開にすることで、そのもどかしい気持ちまでも表現した名曲。
初めて聴いたときは鳥肌立った。

それと同時に、キンモクセイの可能性はまだまだあるんだなと感じた。

その期待に応えるかのように間髪いれずにリリースされたアルバム「13月のバラード」。
先行のシングルが夏と冬という正反対の楽曲で、アルバムをどうすればよいか悩んだ末にたどり着いたのがアルバム全体で1年を表すというものだった。

1月の「冬の磁石」に始まり、12月の「13月のバラード」に終わる1年。
その中にはメンバーそれぞれが作詞か作曲に絡んで曲があるのが特徴的。

本来であればそれはバラバラな仕上がりになってしまう可能性があるのだが、1年を表すと決まっているので、それはむしろ季節を彩る色となる。
聴き手としても季節を感じながら聴いているので、思った通りに次々と移りかわる楽曲の姿に華やかさを感じるだろう。

2枚のシングルに合わせた形なのだが、それがメンバーの個性を引き出す最高の一枚になっている。
中でも「春のセンセーション」、「僕の夏(more 陽炎 version)」、「13月のバラード」は必聴の名曲。

ここから少しリリース間隔が空き、10ヶ月ぶりとなるシングル「さよならの表情」。
明るさと切なさが絶妙に混ざり合う心地よい一曲。

この曲面白いのが、PVで見るとより良さがわかるということ。
映像と合っているということもあるのだが、それ以上に映像に合う楽曲であるとも言える。

続いてリリースしたアルバム「さくら」。
全曲さくらをコンセプトにした珍しいカヴァーアルバム。

しかもその選曲が森山直太郎さんの「さくら(独唱)」から、松田聖子さんの「チェリーブラッサム」、坂本冬美さんの「夜桜お七」まで新旧、男女問わずなのが面白い。

そしてその圧倒的な完成度の高さ。
「夜桜お七」なんかは完全にキンモクセイのものになっていたくらい、彼らの技術力の高さを見せ付けてくれた。

一曲だけ収録されているキンモクセイの新曲「さくら」もこの流れの中で違和感なく聴けるのは流石。
シングルでない分知名度は低いが、これもまた名曲だ。

続いてリリースされたのがシングル「金木犀e.p.」。
1曲目の「金木犀の花」は泣けるバラードナンバー。

泣けるを強調しているのは、PVでブラマヨの吉田さんがひたすら大泣きしているので非常に印象に残っているからだ。

もちろんそれを除いても、シンプルで壮大な仕上がりと、君を失ってしまった後悔を綴る詩の内容で切ない気持ちにさせてくれる。
バンド名を冠した楽曲だけあって、本気度を感じる一曲。

3曲目の「えんぴつの恋」も要注目。
「金木犀の花」もそうなのだが、編曲に真心ブラザーズの桜井秀俊さんが加わっているのだ。

聴いた瞬間にいつものキンモクセイとは違う軽快さを感じるのは、まさにそのせい。
その甲斐あってかなり中毒性の高い曲となっている。

そしてキンモクセイの活動の集大成と言えるベストアルバム「ベストコンディション 〜kinmokusei single collection〜」をリリース。
Singles Discには「二人のムラサキ東京」を除く全てシングルが収録され、初回盤のBonus Discには前述の「二人のムラサキ東京」他、シングルのカップリング曲、トリビュートアルバム等に収録された楽曲を収録。

初心者には入りやすいアルバムというだけでなく、ファンからしても新曲「涙の木の唄」、未発表バージョン「さよならの表情〜Sunset Ballad〜」が収録されているの、楽しめるアルバム。
個人的には「DEATH NOTE TRIBUTE」に収録されていた「オヤスミナサイ」が入っていたこと嬉しかった。

しかし、ベストアルバムというのは必ずしも喜べるものではない。
それは内容の話ではなくタイミング。

売り上げが落ちてきている中でのリリースとなる場合、それがバンドとしての区切りとなるケースがあるからだ。

キンモクセイの場合も例外ではなかった。
このリリースの約2ヵ月後、残っているライブを以って活動休止することが発表された。

解散でなかったのが救いだったが、それから現在に至るまで東日本大震災の被災地支援のためのコンピレーション・アルバムに書き下ろした「アシタ」で再集結したのみで、活動休止が続いている。

その間それぞれソロで活動しているのですが、
白井さんや後藤さんはサポートとして。
張替さんはサポートはもちろん、楽曲製作ユニットHALIFANIEとしてYUKIさんやJUJUさんなどに楽曲提供。
佐々木さんは澤近泰輔さんとのユニットSasatikaとして活動。

そして伊藤さん。
ここ数年表立った活動はありませんでしたが、2014年4月11日にホームページを立ち上げて、新曲を公開しています。

先日Sasatikaのライブにもゲスト出演するなど、なかなかアグレッシブに動いているようです。

実は、今回キンモクセイの特集をしようと思ったのは、これがきっかけです。
ようやくキンモクセイ全員の頑張っている姿見えてきたので、書くなら今ではないかと。

この記事でキンモクセイという素晴らしいバンドのこと、そして楽曲の事を知っていただければ幸いです。

活動再開はまだのようですが、必ず戻ってきてくれると信じて待っています。
この記事へのコメント
本当にいいバンドでしたね。

「僕の行方」「二人のアカボシ」の頃の勢いは本当にワクワクしましたが、実は「NICE BEAT」あたりからが、「歌謡曲」も「ポップス」も超越した本当に普遍的な「日本の歌」を披露していく、キンモクセイの本領だったのではないかと思っています。

私は「恋人なくした」が一番好きです。
Posted by リスト係 at 2014年09月07日 01:32
>リスト係さん
コメントありがとうございます!

確かに「NICE BEAT」は大きな分岐点になりましたね。
「歌謡曲」も「ポップス」も超越した「日本の歌」という表現は"まさに"ですね。

このまま活動が続いていればどんな名曲が生まれていたことか…。

「恋人なくした」良いですよね。
Posted by micarosu at 2014年09月07日 15:04
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