今回はウラニーノの「あるよ」を紹介します。
6年ぶりのフルアルバム。
"あるよ"
ウラニーノにしては柔らかい印象のタイトルだ。
今までのアルバムやシングルは、タイトルだけでは何が描かれているのかわからない独特の存在感があったのだが、今作は広い意味の言葉を使っていることで、また違った存在感を放っている。
それを見て、今までに無いウラニーノが聴けるかもしれないという期待をさせてくれたのだが、そんな期待など遥かに超えるような作品を聴かせてくれるのだから流石だ。
最初の曲は「ヒューストン〜ぼくらは未来へ〜」。
アコギの音色と語りの始まりから一気に耳を傾けてしまう。
遠い昔にはあったはずの大切さを忘れていないかいと疑問に感じながらも、歩みを進めていこうとする姿に色んな想いが重なる。
そしてタイトル曲「あるよ」。
メロでは何も無い事を嘆く姿を描きつつ、サビでは"あるよ"と背中を押してくれるよう。
いや、包む込んでくれるようと言ったほうが良いだろうか。
その選択を間違いとするのではなく、少し見方を変えるだけで意味のあるものなる。
"東京には緑が意外とあるよ"という素朴な確信に、ハッと気づかされるものがある。
続く「ロックンロールで殺して」の軽快なアップテンポには結構驚いたのだが、歌詞を聴いているとウラニーノらしさが全開で安心。
このウラニーノロックンロールなら殺されても良いなと心底思う。
もうこの新境地も言える3曲だけで名盤と言って良いほど最高の出だし。
ここから少し重めの展開になるのだが、前半の光の部分との陰影がくっきり出ていて、それぞれの良さを感じることができる。
中でも特筆すべき楽曲は「本当のこと」だろうか。
見えていることが全てではない。
昨今の一部の情報だけで何でも叩こうとすることへの懐疑と、背景を知ることの大切さ、そして正しいとは何なのかという葛藤。
綴られた言葉の想いに、色んなことを考えさせられる。
ここから「荒川クルーズ」や「山陽道はまっすぐに」の日常感と開放感ある素朴な楽曲へと流れることで、重くなりすぎないのも良い展開。
ボーナストラックの形で収録された、佐久間正英さんとの共作「夢の中で」も含めて、アルバム全体としてウラニーノらしさと新境地、そして考えさせられる言葉が堪能できる一枚になっている。
ウラニーノの歩んできた音楽は、確かにここに"あるよ"。
ちなみに、下記リンクからそれぞれの楽曲が視聴できます。
あるよ
ヒューストン〜ぼくらは未来へ〜