キイロヒトとstunning under dogによるスプリットアルバム。
日常はドアを叩く。
そのインパクトのあるタイトルに引かれるように聴き進めた先には、キイロヒトとstunning under dogが生み出す深みのある世界が広がっている。
まずはキイロヒト。
サウンドの中に光と影、そして歌詞の内容にシンクロするような感情を込めているのが印象的。
「或る部屋の、」はその魅力が詰まっていて、流れるようでありながらどこか靄がかかったようなサウンドは、過ぎていく日々とその中を生きる感情の陰の部分が示されている様で、聴いているだけで不思議と惹きこまれてしまう。
どことなく後ろ向きな歌詞が耳に残る「symphobia」は、サウンドでは反対に日が昇るような温かさ、新しい日々の始まりのようなものを感じさせてくれる。
これは詩の中で回顧しつつも、どこかそれを納得していて、次へ踏み出そうとしている姿を見せようとしているのだろう。
「migraine」のように静かな始まりに広がるように響く美しいギターの音色、徐々に音が力強さを増しながら感情も高めていく展開も聴き逃せない。
続いてstunning under dog。
彼らの音楽は聴いた瞬間から今までに無い不思議な感覚を覚える。
「TD」がまさにそれで、歌声やコーラスに魅せる繊細さや素朴さと、シンプルそうに見えて奥深いサウンドが作り出す素晴らしい世界に、感動に近いものが得られる。
最後の「♪傍観の空」の部分は特に素晴らしい。
一転してアップテンポに駆け抜けていく「愚か者」も奥深いサウンドは変わらないが、声をからしながら歌う姿に熱い想いを感じる。
熱い思いという点では「雨宿り」の言葉も外せない。
葛藤の中に見える涙と、命の尊さ。
吐き出した感情が畳み掛けるように響いてきて、聴き手の感情を揺さぶってくる。
3曲ともタイプは違えど、感情が反応してしまうという点では同じ。
それが彼らの魅力なのかもしれない。
それぞれに個性的で存在感のある2組。
その2組が組んだアルバムが良いものにならないはずがない。
彼らの魅力を知るという意味でも1枚のアルバムという意味でも、素晴らしい一枚。
ちなみに、下記リンクからそれぞれの楽曲が視聴できます。
「或る部屋の、」
「TD」
「愚か者」